ギリシア神話の女神のボトルです。トリコロールには「女性性」「女神」の象徴を持つボトルが2本(「B2ヘカテ」と「B9フェミニン・プリンシプル」)あります。
上層のピンクはレッドに光が入った「火」「外向」の色。
下層のブルーは「水」「内向」の色。
上下の対関係を繋ぐセンターの色は、レッド(火)とブルー(水)を均等に持つ2次色のバイオレット。
このボトルは火と水、男性性と女性性、地上と冥府、外見と内面…相反するものの「統合」のシンボルです。
色からシンボルを読み解く
上層のピンク(レッド)・下層のブルー、そして中間層のバイオレットは上層の火(レッド+クリア)と水(ブルー)を混ぜ合わせた色です。
B2「ヘカテ」ピンク/バイオレット/ブルー
- 上層のピンク「他者へ向かう火のエネルギー(愛)」「無条件の愛」
- 中層のバイオレット「火と水を統合することによるバランス・変容・トランスフォーマー」
- 下層のブルー「内省~自らを知る」「自己受容」「自分を表現する」
自省が強く、自分の複雑な多面性をうまく統合して人間的な魅力として昇華しています。またその魅力を積極的に人のために活用しているバランスがよい人です。
- 上層のピンク「ありのままの自分を愛せない」「心をオープンに出来ない」
- 中層のバイオレット「葛藤」「考えすぎて動けない」
- 下層のブルー「内にこもる」「引っ込み思案」
中層のバイオレット=上の火・下の水を併せ持つバイオレットが動くべきか・引くべきかアンビバレントな「葛藤」を抱いてしまうかもしれません。
ヘカテのシンボルから色を読み解く
ヘカテは春の豊穣の女神の属性を持ちます。
地上に豊かさを与える春の女神たちの多くは「冥府」の女神でもあります。暗い冬を越え、地下(冥府)から地上(大地)へと芽を吹きだす春の植物をイメージすれば、冥府と地上、暗い冬と明るい春、死と生の誕生が相関していることが分かりますね。
よってこのボトルは、自分の中にある双極(死と生命、冷静と情熱、内向と外向、女性性と男性性etc…ブルーとピンクで象徴されています)を、センターカラーのバイオレットで統合し「ありのままの自分のバランス」「ありのままの自分を愛す」ボトルです。
キリスト教会がヨーロッパに台頭する以前、ギリシア・ローマ神話世界は、後のローマ・カソリック教会支配時には考えられないほど多くの八百万の神が地上で暮らす世界観を持っていました。
メソポタミアより受け継がれた無体系な神々は、ギリシア神話として体系・整理されましたが、その過程では、人間にとって馴染みやすく、功徳を期待できる「固有の神話」「固有の儀式」を持つ神が人気を博しました。
独自の神話を持つ神々は完全に独立して名を残し、
神話を持たない神々は神話を持つ・似た属性の神々に習合されていきます。(中には名前すら忘れ去れた神々も多くいます)
ヘカテと大地母神
ヘカテの起源はエジプトのカエルの頭部を持つ女神、「呪術と出産の女神ヘケト」だといわれています。ヘケトは「地母神」「大地の女神」です。
よってギリシア神話のヘカテは「大地母神」であるデメテル(豊穣神・ペルセフォネの母)・ペルセフォネ(春の女神)と習合しています。
ペルセフォネは冥府の王ハデスに見初められ、母デメテルに知らされぬまま地下世界に連れ去ってしまいます。激怒したデメテルはアテネ郊外のエレウシス神殿に引きこもりました。
大地は荒れ作物は育たず、人々は飢餓に苦しみ、困り果てたゼウスはハデスに伝令を送り、ペルセフォネの帰還を命じます。
一計を案じたハデスは、ペルセフォネを地上に帰す前に柘榴を1粒食べさせます。
「冥府のものを食べた者は、冥府に留まらねばならない」
ルールは世界各地に見られますが、ペルセフォネも1年の3分の1をハデスと冥府(地下)で、3分の2をデメテルと地上で暮らすことになりました。
ペルセフォネが地上に表れる時、母であるデメテルは娘の帰還を祝い地上に豊穣をもたらします。これが「春」の季節です。
「大地の死と蘇り」を司るデメテルとペルセフォネは「地中に撒かれ、芽生えて地上に出る種と芽」を象徴します。植物のサイクルは「人間の魂の死と再生」ともリンクしますね。
エレウシス神殿では、死後世界での幸運のためデメテルとペルセフォネと繋がる8日間の「エレウシス密儀」が盛んにおこなわれました。
人間にとって最も神秘的で魔術的なのは「生と死の循環」。生者の願いが向かうのは「死後世界での安寧」。
生命の循環の中では植物も人間も、相矛盾する2つの側面…ピンクで表される「春の女神・生命の誕生」と、バイオレット&ブルーの「密儀・冥府・死」の通過儀礼を避けて通れないのです。
ヘカテと月の女神たち
象徴学的に地球は月と関連します。「大地母神」たちもまた「月」と深い関りを持ちます。
よってヘカテは月と狩猟の女神アルテミスとも習合されます(従姉説もあり)。アルテミスは「夜と魔術の女神」です。
それらからヘカテは「月」「呪術」「冥府」を司る女神となり、ケルベロス(ハデスの地獄の番犬・3つの頭を持つ)を連れ歩く三面の恐ろしい姿で描かれるようになります。
「復讐の女神」とも称されるヘカテは、中世までは「妖怪変化」の女王として「黒魔術」の本尊とされたり、三叉路や十字路に祀られた三面のヘカテ象には、ヘカテが現れないように通行人が供物を捧げました。
余談ですが、仏教・チベット仏教・ヒンドゥーでも三面の神仏は呪術の強さで知られます。
また日本にも「辻切り」と言って辻や境界線・領域に道祖神などを祀る習慣がありますね。遠く離れた文化でちょっとした類似点を見つけるたび、アカシック・レコードというかユング的集合的無意識って面白いなぁと思います。
月や大地の神秘性の中でも、比較的ダークな側面を象徴しているヘカテですが、ペルセフォネやアルテミスは、非常に美しい女神たちです。
※カラーセラピスト勉強会「カラーシンボリズム」参加者はブルーのカラーシンボルで紹介した女神たちを思い出してください。
地上が生き生きと輝く、春の女神ペルセフォネが冥府の女王でもあるように、冥府の番犬を連れ歩く魔術の守護神ヘカテは、美しい月の女神の顔も持ちます。
繰り返しますが、このボトルはピンクとブルー、春と冬、生と死、地上と冥府…相対する2面性を統合するバイオレットがセンターカラーにあります。自分の影の部分(ネガティブ)に固執してしまうと、
ブルーは「内向き」にしか作用せず「引っ込み思案」「内側(冥界)にこもる」「自己表現を諦める」ことになります。
しかし、太古、豊穣は太陽ではなく「月」の神々が司るものでした。
ヘカテが「自分がどれほど多くのものを地上世界へ与えることが出来るのか」気づきさえすれば、地上に春がやって来ます。
当記事に関しまして
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トリコロール養成講座内では、1本ずつのシンボルを詳細に解説する時間がありません。当校のトリコロール履修生に参考になれば…と「シンボルと色」をまとめたものです。
https://www.white-tara.com/scentsation-tricolore/ -
色とシンボルの解釈は無数にあります。皆さまの解釈を加えてください。
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当記事は、当校で「カラーバイブル講座(4時間)」を学んだ程度に「カラーセラピーと西洋史の関連を理解している方」へ向けています。
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