光は太古より地上の生物の生命の源でした。
膚が受けた光は細胞に影響を与え、目から入った光は視覚を形成します。特に目は感覚器官の役割だけでなく脳下垂体や死視床下部、松果体に光を繋ぐ橋です。
朝と夜、季節による太陽光の変化は目や網膜を通じ脳の深部に作用し、自律神経や内分泌系に影響を与え、自律神経や内分泌は人間の精神や感情、肉体に影響を与えます。自然と隔絶された暮らしをする現代、光や色にほんの少し意識を向けることで心身の不調が改善される可能性が多大にあるのです。
光と松果体とサーカディアンリズム
松果体やサーカディアンリズムは(カラーセラピストにとっては)「サードアイ」「第3の目」「パープル&インディゴ」のキーワードで馴染み深いですよね。
地球上の全生物~バクテリアから人類まで~は「時間遺伝子」「サーカディアンリズム(生物時間)」を持っています。その中核にいるのが松果体です。
人類は地球の自転に合わせ、約24時間の時間感覚・リズムを遺伝的に受け継いでいます。
松果体は概日リズムを調整する神経ホルモン・メラトニンを分泌し睡眠を誘発、体内時計・概日リズムを調整します。
松果体は網膜を経由し脳が受け取った光の量に反比例した、メラトニン量を分泌しています。
自然と調和した暮らしをしていれば、メラトニンは夜に多く、深夜AM2~3時には昼間の約10倍量が分泌されピークを迎えます。
年齢的には1~5歳の子供に多く分泌され7歳で松果体の成長は止まります。高齢になるとメラトニン分泌は微量になります。
自然の周期リズムの基本は昼(活動)と夜(休息)。
「寝る子はよく育つ」「歳をとって睡眠が短くなった」など日常でも聴く機会があると思いますが、生理学的理由があるのです。
- 1日(昼と夜/24時間)のサイクル
- 春・夏・秋・冬の季節
- 潮の満ち引き
- 月の満ち欠け
サーカディアンリズムは、地球誕生から繰り返され続けている自然の摂理と連動しています。
電球が普及し人間が室内と室内灯の下で暮らすようになる以前、自然界の周期と人の暮らし&生理のリズムはほぼ連動し、松果体は現代より大きく活性化していました。
しかしアメリカの調査では、1900年に75%を占めた野外労働者が1970年には10%以下に激減しています。
更に近年では、たとえば就寝前に見るスマホやPCのブルーライトは松果体に作用しメラトニンを抑制してしまいます。周期的リズムが狂えば気分、行動、性格にも影響が出ます。
もしメラトニン調整が上手くいかず、サーカディアンリズムが狂うとどうなるのでしょうか?
季節性情動障害(SAD)
ヒポクラテスは季節(自然や宇宙の変動)と人間や動物が連動して変化することに着目しました。
程度の差はあれ、誰しも
「春は軽快な気分になり体調も良いけれど、秋から冬にかけて落ち込みがちで体調がすぐれない」
と感じます。
「そんなムード」程度なら自然(季節による日照時間や気温)とリンクした変化です。しかし、秋から冬にかけ鬱状態や自殺に至るほどの変化であれば深刻です。
1981年、科学者ノーマン・E・ローゼンタール博士は、緯度が高く冬の日照時間が極度に少ない国に冬季起きる気分障害を「季節性感情障害(SAD)」と名付けました。SADはサーカディアンリズムが狂ってしまっている代表的な例です。
秋から冬にかけての日照時間の不足によりメラトニンが過度に分泌され、気分障害、情緒不安定、神経症、鬱、過食、性欲減少・排卵抑制などの症状が表れます。
メラトニン分泌の過剰にともないセロトニン分泌は減少します。月経前症候群(PMS)で「甘いものを食べる」方が多いですが、糖分はメラトニンの過度な分泌により減少したセロトニンを一時的に分泌するからです。
潮の満ち引き・月の満ち欠けから影響を受ける女性(月経)はSADにも罹りやすく、男性の約4倍の発症率です。(光療法はPMSの代替療法としても使用されています)
ローゼンタール博士をはじめとする光療法家・研究者達により、SADを治療するために人工的な高照度光療法器(フルスペクトルライト)が数多く開発されています。
しかし明るすぎる光で神経過敏・イライラを感じたり、頭痛や眼精疲労、吐き気、不眠症などの症状を訴えるSAD患者がいることも見逃せません。自然光に勝る人工光はないのです。
日本ではSADの症例はほぼ耳にしませんが、東北の日本海側(秋田・山形)の生徒さん方のお話では「そういえば秋から冬は鬱っぽい人が多いかも~」とおっしゃる方も多いです。
実際にSADか否か、秋から冬の症状か否かはさておいて、せっかくカラーセラピーを学び、冬も日照時間が激減しない日本に住んでいるのに、自然を活用しない手はありません。
先史時代からは4000万年。新人類から20万年。人類は自然の周期リズムと調和し地球上を生き続けてきました。人間の心身の健康に、自然のリズムが大事じゃないはずがないのです。
サーカディアンリズムの一例)
このようなリズム周期を調整出来ている人は「その時々に何をすべきか。タイミングを掴む」ことが体感でがわかると思います。これぞパープルやインディゴの「宇宙(自然)と自分を調和させる~直観・ワンネス」です。
色と光と視床下部
視床下部は人体のホメオスタシスの中核です。自律神経・体温調整・食欲や血糖値調整などを司ります。
可視光線は380nm~780nmのスペクトルですが、視床下部は光刺激の「質(色/スペクトル)」ごとに異なる指令を出し、赤の色光を感受した時、青の色光を感受した時では、作用される神経・ホルモンが異なります。
1940年代、IACC創始者Dr.フレイリングやフェイバー・ビレンはじめ、多くの研究者は「光の質(色)による生理的反応の違い」の研究結果を残しています。
- レッドライトは交感神経を刺激し、血圧は不安定になり脈拍は上昇します。
- 被験者はレッドライトを浴びている間「後ろに下がる」「広げた手がより外側に広がる」身体的反応がみられました。
- ブルーやブルーバイオレットライトはレッドと逆の作用が見られ不安定さや刺激の要素は見られません。
- イエローライトは静けさや快適さの感覚は得られず、神経的な刺激を感じる被験者が多く「広げた腕はより外側に広がる」身体反応が見られ、刺激と弛緩双方の反応が見られました。
- グリーンやブルーグリーンライトはブルーと類似した結果が見られ、血圧と脈拍は下降し、複合的なバランスをもたらしました。
赤色光は興奮刺激を生理的に与え、青色緑色光は沈静化させる作用があります。
これら「目に色光を照射する」実験は1分間から600秒で行われています。
Dr.フレイリング博士の実験では、レッドライトを照射された被験者の多くが2分で実験をやめるように要求したそうです。
ハーバード大学はじめ様々な機関が「色光と脳科学・ホルモン分泌」の関連を研究し続け、現在は更なる詳細が解明されています。
これらの多くは色光を目に照射しEGG脳波測定器や血圧計で測定をした結果です。
当然ながら「皮膚もまた色光を感受しているか?」と疑問を抱き目を覆った被験者にも実験が行われましたが、おおむね「目に色光を照射するほど直截的ではないものの、皮膚も色光を感知し細胞に影響を与えている」と結論が出ています。
当校のクロモテラピー(色光療法)は、皮膚のトリガーポイント(経絡・ツボ・チャクラ)に色光を照射する手法です。
表面色の効果一例~バブルガムピンク
では、色光ではなく表面色を用いた場合の生理的効果はどうでしょうか?
1979年、アレキサンダー・シャウス博士は自分自身にピンクの部屋での実験を行いました。
通常の状態ではピンクの部屋は血圧・脈拍に影響を与えません。しかし、激しい運動をした後にピンクの部屋に入ると上昇した心拍数・筋活動を低下させることがわかりました。興奮や怒りを抱き、心拍・血圧・脈拍が上昇している時にピンクはそれを軽減するのです。
同年、凶暴性のある海兵隊を「床・壁・天井をすべてピンク」に塗った独房に入れ、ピンクの効果を実証しました。
アメリカの刑務所・少年院では模範囚用にバブルガムピンク(ベイカーミラーピンク)の独房が広く採用されています。
受刑者が攻撃的になった時・自制を求められる時はバブルガムピンクに塗られた「鎮静房」で30分ほど過ごします。受刑者の筋肉は2,7秒で弛緩し、10分ほどで気分の鎮静が始まります。
淡いペールピンクの部屋やバブルガムピンクの小物1つ程度では生理的効果は望めません。色光を目に照射するのと同等な視覚刺激が必要です。
カラーセラピストとして光と色を活用する
- カラーセラピー(色彩療法)とは色の効果を積極的に利用し、心身の健康に役立てること。
- カラーセラピスト(色彩療法士)とは色の効果を理解し・積極的に利用し、自分や他者の心身の健康に役立てることが出来る人。
カラーボトルで心理分析を行うカラーセラピストは、上記の研究者や医師とは立場が異なります。クライアントは実験の協力者ではありませんから、不用意に色光を目に入れることは推奨しません。
カラーコンサルタントは色や光の作用をクライアントに説明し、色彩計画を立てます。しかしカラーセラピストは個人のパーソナルな心理状態を読み解き処方の色を導くので、生理的効果の全てを理解する必要はありません。
プロとしてクライアントへ適切なアドバイスを行うためには、最低限の「色と光の生理的効果」も理解しておくべきなのです。