アブラハム・マズロー(1908~1970)は人間性心理学の第1人者です。
ロシア系ユダヤ人としてアメリカのスラムで生まれ育ったマズローは、ユダヤ人の少ないコミュニティの中で幼少期を過ごしました。青年期の孤独感と絶望、その後の恋愛の成就と結婚など、マズロー自身の人生経験は欲求段階説そのものといってもいいでしょう。
その後、行動主義心理学者の大学教授として活躍しますが、自身の結婚・子の誕生などの経験を経て行動主義心理学の限界を感じ、1962年アメリカで「人間性心理学会」を設立・会長として就任します。
「自己実現論」「欲求段階説」を研究し続けたマズローの研究は、ニューエイジャーや後のトランスパーソナル心理学に大きな影響を与えています。
わたしたちの幸福追求(欲求)には段階があります。
まるでピラミッドを積み上げるように、下の優先的な欲求が叶うと1段上の欲求へと階層が積み上がるのです。
マズローの欲求段階説はフレームワークとしての汎用性が高く、ビジネス心理・マーケティング心理、カラーセラピーのチャクラバランス・リュッシャーの4ベーシックカラー…多方面に応用・活用されています。
「欠乏欲求」と「成長欲求」とは?
この5つ、乃至6つの欲求段階は2つに大別されます。
生きるため最低限必要なものや安全を手に入れ、所属や居場所を維持でき、周囲からの評価を手に入れる…これらは人間の基本欲求です。
この4つの欲求が満たされ・安定すると「自分の潜在能力を生かしたい・活用したい~自己実現欲求」という、2つの「成長欲求」が表れます。
絵を描くのが好き・上手い方は絵を描くことで自己を実現します。家庭を守り子を育てるのが好きで得意な方もいるでしょう。
「自己超越欲求」は自己を超越した大いなるものと繋がる欲求。
いわゆる「至高体験」…自己実現を果たした結果、自分の潜在能力を「大いなる何かからの授かりもの」と気づき、宇宙との合一・神秘体験などを果たす段階です。
次に、カラーセラピーのチャクラバランスと比較してみてみましょう。
人間性心理学とチャクラバランス
マズローの段階説では「下からの積み上げ」には時間をかけ、安定した土台を作ることが望ましいとされています。欠乏欲求段階が不完全だと、上から下に一気に転がり落ちることもあります。
「自己超越欲求」は、「神そのものと合一する」神秘主義者から、個人を神と崇めるカルト教団信者、現代の一部スピ系セミナーの参加者にも顕著にみられます。
この欲求を擽るようなアプローチをかけると、「○○のカリスマのセミナーに参加したい」「カリスマの傍に行きたい。スタッフになりたい」という発展をしたりします。信者の多くは自分で下の段階を重ねてきていないので、欲求を満たすためには「参加する」しかない。よいカモなのです。
それらの信者が目覚め、自分の段階を作り始めるとカリスマの地位は失墜します。他人を土台にした「自己超越」はたいていの場合長続きしません。
カラーセラピストとしてチャクラバランスを用いる
ムーラダーラチャクラに眠るクンダリーニを目覚めさせ、基底チャクラからサハスラーラ(頭頂)まで「下から上に」エネルギーを上げ、身体的・精神的・霊的成長を目指します。
※ただしヨーガには身体重視、精神心理重視、霊的重視など宗派がたくさんあります。
生理的欲求に始まり、生きるに最低限必要な欲求を「下から上に」積み上げ、自己成長段階に至り「自己実現」を果たします。
カラーセラピーを創始したニューエイジャーは、
- ともに「下から上に段階を積み上げる」ヨーガのチャクラ概念と人間性心理学を合致させ
- クライアントの心理・精神の成長・発達段階を知るためにチャクラバランス(色のバランス)を用いています。
カラーセラピーは「選ばれた色(チャクラ)」の偏りから、
- 「今、どこにいるのか」(クライアントがどの段階まで積み上げているのか)
- 欠けているものはなんなのか?
- どこへ向かおうとしているのか?
を推論、クライアントのセッションの中で診断・分析していきます。よって、純粋な古代インドのチャクラ思想とはまた異なるのです。
カラーセラピーの基礎知識