真言密教・両界曼荼羅に欠かせない五智如来の色は、五大五色(五正色)が基本です。
五大と色
仏教五大は
- 地大「黄色」
- 水大「白色」
- 火大「赤色」
- 風大「黒色」
- 空大「青色」
この五元素・五色で構成されています。
しかし、中国の陰陽五行の元素と色は、
- 地「黄色」
- 水「黒色」
- 火「朱色」
- 木「青色」
- 金「白色」
微妙に元素も色も異なります。西洋では元素を五ではなく四つで考える四大元素が主流です(エーテルを含め五大の考えもあり)。
世界各地で哲学者たちが「世界を構成する元素」を定義づけ(象徴は「文化」ゆえ正解はありません)、その国の文化や自然背景の影響を受けつつ「元素を色で象徴化」していてるのが面白い。
これら「世界を構成する元素」の多くを象徴化するには「色」のみならず「形」も多用されます。
特に密教では、古代インドの修法時に創られた「立体祭壇」が曼荼羅のルーツ。修法により「形」が定められ、形に伴い「色」が定められていました。
- 白色「円形」
- 黄色「方形」
- 赤色「半月」
- 黒または青「三角形」
ちなみに、アジアは特に暗い色~「青と緑」「青と黒」の境界線が曖昧です。日本の信号も視覚的には「緑」でも「青」信号ですし、緑の黒髪といえば艶やかな黒い髪のことです。
五大も「緑色」「紫色」が使用されたり、三角形が「黒または青」なのは、そのような背景からです。
色と形のシンボル
「円形」は「白く輝く満月」の色で、修法は「息災・完全性」
円形のシンメトリーな完全性と、全ての色を含む、完璧かつ穢れのない「白色」
「方形」は「富や豊穣の黄色」で、修法は「増益」
方形や四角、数字の4(タロットでは皇帝)など4つの柱に囲まれた空間は「安定」「物質世界」「王者」「地上の支配」などを象徴します。
「半円」は「情愛の赤色」。修法は「敬愛」
ルートチャクラのレッドに馴染んでいると「半円」という不安定な形に赤を置くのは意外ですが、心の中の炎である愛情と移ろいやすさを象徴しています。
「三角形」は「黒色または青色」…状況に暗雲が立ち込める様(目の前が真っ暗的な災厄・戦争などの凶事)を象徴しています。修法は「調伏」。
三角は刺激図形。「上昇」「向上」「知的刺激」を意味しますが、インドでは破壊の神シヴァの図形でもありますし(破壊神となったシヴァの色は黝い~青黒い~)、悪しきものを調伏する図形と言われればそうかもしれないですね。
青は、西洋の四大元素では「水」「女性性」、精霊ではウィンデーネを象徴しますが、密教では「忿怒の色」とされています。
密教五色
「白」「青」「赤」「黄」そして墨線の「黒」は密教…特に真言密教にとって基本色。
ゆえに仏画も「この五色があれば描ける」といわれています。
色を学んでいる方はお気づきかもしれませんが、
- いわゆる一次色(青・赤・黄)と、無彩色(白黒)
- 補足して、人類と馴染みが深い緑色や文化的に関りが深い紫色の二次色
この基本色さえあれば、色の濃淡から無限の色が生み出せるのです。
五智如来の色と方位
真言宗、または両界曼荼羅では非常に重要な五智如来もまた「赤」「青」「黄」「緑」「白」の五色を用います。
宇宙の真理・光そのものの大日如来は「白色」でセンターです。
- 阿弥陀如来「赤色」「西方」
- 宝生如来「黄色」「南方」
- 阿しゅく如来「青色」「東方」
- 不空成就如来「緑色」「北方」
この五仏配置と色が両界曼荼羅の基本であり土台なのです。