チベットでも日本でも人気の薬師如来。
チベット語ではサンギェ・メンラ。サンスクリットではバイシャジャグル。(バイシャジャは「医療」、グルは「指導者」)
衆生の病を治すという質からか、古くからインド・チベット、日本でも庶民からの信仰が篤く、密教でも顕教でも信仰を集めています。
日本では「大医王仏」とも呼ばれ、飛鳥時代から信仰の対象になっています。薬師如来は十二神将・七千眷属を率いていますが、この眷属の多さは衆生を悩ます病の多さを表しているそうです。人間を蝕む心身の病の多さは現代と変わらないのですね。
薬師如来は、
自分自身の心身の病に気づくこと。自身の病が治癒したなら、病を持つ他者が快癒するために祈願をすることを説いています。
病を忌むのではなく、病んで初めてわかる人生の光や希望に気づきなさい、という教えなのです。
法華経には薬師如来の前身?と言われる「薬王菩薩本事品」があり、やはり眷属を従え瑠璃世界に住んでいます。須弥山の東、東方浄瑠璃に住み衆生の病苦を取り払うことに努めており、「薬師瑠璃光如来」とも呼ばれます。
薬師如来の造形
薬師如来の造形ベースは釈迦如来です。…どうりで一見すると釈迦如来か薬師如来かわからない絵が多いと思いました(^^;
一説によると「病んでいる時の釈迦」がモデルだそうです。
螺髪・袈裟のシンプルな如来像に右手は触手印(大地に手を触れる)、左手は薬壺や蜂、薬草を持つ姿で描かれます。
薬師如来の瑠璃色
瑠璃~ラピスラズリはBC5000頃から貴石・護符として珍重されてきました。
ラピスの鉱脈を持たず輸入に頼っていたエジプトでは、深い空の青であるラピスは神秘と財力を示す象徴で、古くはエジプト先王朝時代、ツタンカーメンのアイラインはこのラピスで装飾されました。
主産地がアフガニスタンであることから、ラピスはインドやチベットで多用されていましたが、12世紀にはヨーロッパに輸入され染料・顔料として人気を集めます。
13世紀には、アフガン産の深い青は「ウルトラマリンブルー(海を渡ったブルー)」と呼ばれ、美しく変色しにくいラピスブルーは多くの画家を魅了しました。特にゴシック時代は「聖母信仰」と相まって聖母マリアのローブはラピスラズリで彩色されているものが多いです。
天然顔料は高価なものが多いので、オーダーを受けて絵画を描く場合~多くは宗教画~、依頼主と「どの画材を、どの程度使用するか?」を打ち合わせて描くことになります。
当時も依頼主と画家の間で「ウルトラマリンブルーをどの程度使用するか?」を契約した契約書が残っています。
現在の仏画も、わたしの師匠たちの話を総合すると、
- 水干絵具か、岩絵の具か(岩絵の具の方が高価)
- 金泥のランク
などを依頼主である寺院と相談し、その契約に添い彩色しているようです。檀家離れが進むせいか、「最近は水干絵具のオーダーが多い」という話も聞いたようなw
当校のWSでは安価な顔彩を使用していますが、本格的な仏画を描くときは絹本だけで数千円~数万(大きさによりけり)、彩色画材の費用だけで数万かかることもありますので、作品をオーダーする場合は当然「画材費」がかかってくるんですね。
そういう観点からも「点描仏画」は画材費が安く、「気軽に仏画を描ける」かな?と思って始めたのです。
瑠璃は仏教の七宝の1つであり、シルクロード遺跡にもラピスを顔料にした瑠璃で彩色した壁画が多く残っています。
宗教画とラピスの濃い青(瑠璃色)は切っても切れない繋がりがあるのです。
薬師如来仏画
薬師如来点描曼荼羅
オプションで「C10 薬師如来」を応用し曼荼羅風に描いていただくことも可能です。(サンプルはクァンイン)