チベット仏教にもチャクラ思想はあります。
チベットは隣国である2つの大国~インドと中国の影響を多大に受けつつ、独自のチベット仏教、チベット医学を発展させてきました。ざっくりいえば、
- 人体は3つの体液「ルン(風)」「チーバ(胆汁)」「ベーケン(粘液)」で構成されており、これらは「気(ルン)」の変化形である。
- 頭頂部と臍下を結ぶ中央脈管(ウマ)があり、ウマから枝分かれした「ロマ(陽・赤・火)」「キャンマ(陰・白・水)」2つの脈管は、中央のウマと絡み合いながら下降し、臍下で再びウマと出会う。
- ウマをセンターに主要な脈管が絡み合うポイントがチャクラである。(支脈もたくさんあります)
- 「気(ルン)」を滞りなくウマへと導き流せなくなると、心身に滞り(病)が起きる。
アーユルヴェーダの体液説、中医学の経絡、クンダリー二・ヨーガ、タントラ・ヨーガなどなど連想されるものは多いと思います。
チベットのチャクラと五智如来
チベット仏教(医学)で重視されるチャクラは5つ。密教の中尊である五智如来と色、元素と相応しています。
長波長~短波長のスペクトル(虹の色)とチャクラを相応することに馴れていると違和感があると思いますが、多種多様あるチャクラと色の一例として紹介しておきます。
頭頂(王冠) | ヴァイロ―チャナ(大日) | 白・空大 |
喉 | アミターバ(阿弥陀) | 赤・火大 |
心臓 | アクショービヤ(阿しゅく) | 青・水大 |
臍 | ラトナサンバヴァ(宝生) | 黄・地大 |
会陰 | アモーガシッティ(不空成就) | 緑・風大 |
- チベット仏教にもチャクラ思想はあります。チベットは隣国である2つの大国~インドと中国の影響を多大に受けつつ、独自のチベット仏教、チベット医学を発展させてきました。
五智如来の色と方位
真言宗、または両界曼荼羅で重要な五智如来もまた「赤」「青」「黄」「緑」「白」の五色を用います。
センターに位置する宇宙の真理・光そのものの大日如来は「白色」。あとは、
- 阿弥陀如来「赤色」「西方」
- 宝生如来「黄色」「南方」
- 阿しゅく如来「青色」「東方」
- 不空成就如来「緑色」「北方」
この五仏配置と色が曼荼羅の基本なのです。
チャクラと神智学
ブラヴァッキーはシークレット・ドクトリンで、トランス・ヒマラヤ系では3つの脈管があり、
- アカ―シャ(虚空の気)が通る脊椎中心管を「スシュムナー」
- スムシュナーから分岐された左右2本の管を「イダー(女性性・深紅)」「ビンガラ(男性性・黄色)」
- この管は「プラーナ(気)」や「クンダリー二」が流れる
と記しています。
イダーとビンガラは中心管を基軸に絡み合う2匹の蛇で象徴され、この図像はウマを基軸に交錯するロマ・キャンマ、杖を基軸に交錯するヘルメスの杖の図象とも酷似しています。
神智学協会のチャールズ・リードビーターはその著作の中で、王冠のチャクラについて、
完全な活動状態に至ると、すべてのチャクラの中で最も輝き、形容する言葉もないほど色彩にあふれ、とうてい見ることができないほどしばらしい速さで振動する。スペクトルすべての色が含まれているように見えるが、全体としては菫色である。
~このチャクラは普通最後に目覚めるものである。それは初めは他のチャクラと同じ大きさをしているが、精神の発達段階が進むほど大きくなり、最後には頭全体をすっぽり覆う大きさになる。~ドームのように頭上に突出し、高貴な王冠のように輝くのである。
東洋の神仏や聖賢の画像・彫像にはこのような形をあらわしたものが多い。
として、如来像の螺髪を「王冠(クラウン)チャクラ」の発達の由来にしています。
白毫(如来の眉間に描かれる○)は確かにサードアイなんですけど、当校の仏画ワークショップでも螺髪は「クラウンチャクラの活性によるもの」とお伝えしています。
インドや中国の影響を受けたチベット医学のチャクラ、そのチベット密教を取り込んだ神智学のチャクラや微細身の思想、さらにそれを応用活用している欧米発信のヒーリング、セラピーシステムのチャクラ…各々が影響を与えつつ、土着の宗教も取り込みつつ受け継がれているので、「正解がない」のが実に密教・雑密的で面白いのです。
民俗学、文化人類学、宗教学には「絶対的正解」はありません。カラーセラピーで用いる色彩象徴もまた「正解がない」「人類の文化史そのもの」なのです。